自動人形は内観に耽る

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Chikirinの日記さんの難民関係の連載のおかしなところを逐一指摘してみる 第五回

この連載は、「Chikirinの日記」さんの難民関連の連載のおかしなところを逐一指摘する連載第五回目です。

Chikirinさんは現在第八回まで連載され、この連載は完結されています。

第一回 問題はデータと首相の認識

第二回 びっくり! これが日本の難民認定基準

第三回 難民条約とインドシナ難民

第四回 トルコとミャンマーの違いとは?

第五回 難民ってどーやって日本に来るの?

第六回 偽装難民についてはどう考えればいい?

第七回 外国人労働者と移民と難民

第八回 拡散と寄付とイベントを!

 

私のこれまでの連載はこちら

第一回

第二回

第三回

第四回

 

今回はChikirinさんの連載第五回目のおかしなところを探していきます

d.hatena.ne.jp

ただ今回はあまりおかしなところは多くありませんので、軽めです。

 

日本に来た難民の人の数は正確にはわかりません。

分かるのは○○年に難民認定申請した人の数だけです。

この辺りは正しいですね。

その後、Chikirinさんは、難民認定した人が、申請したときどのような在留資格を持っていたか、あるいは、持っていなかったかを図表で提示します。

ここも正確です。ただ

一番多い「正規の短期滞在者で、難民申請をした 2882人」には、観光ビザで日本に入国し、そのビザが有効なうちに申請をした人が含まれてるんでしょう。

(ビザが切れた後に申請すると、最後の「非正規の在留中に申請」というカテゴリーかな)

細かいのですが、短期滞在は観光のほか、商用などの短期の用務を行う場合に発給されるものですので、観光ビザというくくり方は正確性に欠けます。

 

あと、個人的に結構気になるのは、かっこ書きでさらっと書いてらっしゃいますが

(ビザが切れた後に申請すると、最後の「非正規の在留中に申請」というカテゴリーかな)

ここです。これ、結構重要です。

というのも、法務省は結構意地の悪いデータを出しているからです。

 

難民として困りに困って日本に来たものの、難民認定制度があることすら知らなかったり、手続きがややこしくてよく分からずに不法残留状態に陥ったりする人もいるはずです。

ただ

非正規在留者のうち,収容令書又は退去強制令書が発付された後に申請を行った者は875人(約73%)と なっています。

これなんですよ。

収容令書は、外国人が退去強制(強制送還のことです)事由に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときに、発布されるもので、これが出されると基本的にその外国人は収容されます。

退去強制令書は、強制送還されることが決まった時に出されるものです。この場合も収容されます。

少し意地の悪い言い方をすれば、摘発されたり強制送還されると決まった後に、後出しじゃんけんのような形で難民認定申請をしているわけです。

 

また、複数回難民認定申請をすることは、特に制限がないので、実際何回も難民認定申請する人もいます。その中でも

申請者全体の約19%に当たる1,425人が,過去に難民認定申請を行ったことがあり,このうち正規在留者は890人(うち,難民認定申請中であることを理由に在留資格「特定活動」を付与されている者が約92%),非正規在留者は535人(うち,既に退去強制令書の発付を受けている者が約86%)となっています。

(強調は筆者)

後出しに後出しを重ねてくる人もいるわけです。

 

実は、難民認定申請をすると、強制送還はストップされます。

難民かもしれない人を、迫害を受けるおそれのある国に送り返したら、どーなるでしょう。

迫害されてしまうかもしれませんよね。

だから、難民かもしれない人は強制送還してはいけない、ノン・ルフールマンの原則というルールがあります。

 

つまり

強制送還されそうになっている人が、当面の送還を避けるために難民認定制度を悪用できることになります。

法務省はそのことを明示しないまでも、データを出すことで仄めかしているんですね。

ちょっと底意地の悪いやり方です。

 

さて、難民認定申請する人の多くは、飛行機の国際線できます。現在、ボートとかでやってくる人は殆どいません。

でも、国際線高いよね、なんでわざわざ日本に?ということで、Chikirinさんは、アジアの人からすると近い、お米の国、自国民のコミュニティがあることを挙げています。

アジア人みんな米食ってるかどうかはさておき、ある程度は当たっているでしょう。

 

また、日本をわざわざ選んだわけではなく、とりあえず、最も素早く避難できる行き先が日本だったから、という人もいます。

一方、アフリカや中東から来る人など、「どこでもよかった!」みたいな人もいます。

観光なら日本に来るのにビザが不要な国もたくさんあるんで → 日本のビザ免除国一覧

すっごい細かいんですけど、中東で査証が免除されるのはトルコ・イスラエルの2国、アフリカはチュニジアモーリシャスレソト(どこ?)の3国だけと、Chikirinさんの貼ってるリンク先に書いてあります。

 

基本的に国際線に搭乗するときは、行き先のビザを持っているか、査証免除でない場合はチェックインすら拒否されることがあります。

ですので、中東やアフリカからくる難民の人って、大体ビザ持っているんですね。

「どこでも良かった。ビザが一番早く降りたのが日本だったので日本に来た」とでも書いておけば完璧でした。ああ、細かい。

次に行きましょう。

 

難民って海外旅行者とは違うので、慎重に検討して目的地を決めてるわけではありません。

だから到着後に初めて「日本で難民認定してもらうのって、めっちゃ難しい」と知る人もおり、

中には成田空港で正直に「難民です」と申告してソッコーで送り返されそうになる人もいれば(昨年の申請者 7586人のうち空港や海港で難民申請をしたのは 173人)、

空港近くにある施設に収容され、何ヶ月も滞在する(放置される?)人もいます( 2015年末時点で難民審査中の 394人が収容されてます)。

 さっきのとおり、難民ですって申告して難民認定申請したら送り返されません。

ちなみに難民認定申請は、日本にいさえすればいつでもできます。

あとはこれですね。

空港近くにある施設に収容され

収容される人って、強制送還すべきかどうか疑いがかけられている人と、強制送還が決定している人なんです。

実は難民認定の手続きと、強制送還の手続きって結構絡み合ってるんです。

で、どこに収容されるのかというと、東京・名古屋・大阪とかの地方入国管理局の庁舎内にある収容場か、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)・大村入国管理センター(長崎県大村市)になります。

空港近くの施設って・・・結構ぼやっとしたイメージで適当に言ってるんだろうなぁと思います。

 

収容と難民認定申請って、結構問題になることが多いのに、ぼやっとしたことを書くのは、ちょっと不勉強だよね・・・という気もしないではありません。

 

今回は結構粗探しというか重箱の隅をつつく感じになってしまいました。

次回に続きます。