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自動人形は内観に耽る

たまに小説も書く夢想派社会系ブログです

Chikirinの日記さんの難民関係の連載のおかしなところを逐一指摘してみる 第二回

この連載は、「Chikirinの日記」さんの難民関連の連載のおかしなところを逐一指摘する連載第二回目です。前回はこちら

Chikirinさんは現在第五回まで連載されています。

第一回 問題はデータと首相の認識

第二回 びっくり! これが日本の難民認定基準

第三回 難民条約とインドシナ難民

第四回 トルコとミャンマーの違いとは?

第五回 難民ってどーやって日本に来るの?

 

今回はChikirinさんの連載第二回のおかしなところを探してみましょう。

 

d.hatena.ne.jp

前回は問題提起でしたので、おかしなところは殆どありませんでしたが、今回からは違いますよ!いっぱいあります。

Chikirinさんは、日本の難民認定数と認定率が少ないことをNPO、難民支援協会(JAR)の資料を引用し、示します。

2015年の日本の難民認定数は27、認定率は0.5%と、なるほど、少ない。

 

余談ですが、難民と認定しないが人道上の理由で在留を許可する場合があります。今回はこれを補完的な保護と呼びましょう。

日本で言えば、2015年末までの累計難民認定者数が660名であるのに対し、補完的な保護者数は2446名と約4倍となっています。

このあたりは、グレーな部分を置き、なるべく裁量を残しておきたがる日本の行政の悪癖かもしれません。

また、難民認定と補完的な保護では待遇が異なるため、同一視できない点で注意は必要です。

 

先進国では、補完的な保護を行っている場合と、いない場合があります。

難民認定数と認定率、また補完的な保護数にそれを加えた最終保護率を提示するのがフラットなものの見方でしょう。

例えば、こちらの最終頁をご覧ください。PDFだりぃーってかたはwikipediaでも見てください。

グレーな部分を置くのがいいか、白黒はっきりつけるのがいいのか、皆さんも考えてみてください。

 

ここからが本番です

さて、Chikirinさんは「なんで日本だけこんなに認定率が低いのよ?」と問題提起したうえで、その答えを法務省が公開している難民認定事例集(リンク先最下段から数年分辿れます)に求め、そこから日本独自の認定基準を4つ導き出します。

 

今回は、法的に難民認定の要件が実際にどのようなものかということを見ずに、おかしなところを探していきます。

なぜなら、大体の場合、Chikirinさんの導き出した基準は事例集を読めば反駁できるからです。法律の話を持ち出すまでもないということですね。

ではいってみましょー

 

1.迫害主体が本国政府ではなく、過激派の場合は難民とは認められない

少数民族が多数派民族に

民間人が過激派組織に

シーア派スンニ派に迫害されても難民と認定されないってひどない?

というお話のようです。

なるほど、では事例集を見てみましょう。

申請者が主張する迫害主体は,本国政府ではなく,

 書いてますねぇ。しかし続きがあります。

違法行為について,特定の個人・集団を対象として意図的に放置,助長している状況にあるとは認められず,申立てのあった事案も同様の対応が 見込まれることから,

 不認定、とあります。確認はしていませんが、迫害してるのが政府じゃない場合大体こんなことが書いてあります。そりゃそうですよね。

 

神戸山口組の構成員が、山口組に攻撃されているとか、東電社員が脅迫や投石を受けたとか言って、外国で難民申請したらどうなるでしょうか。

大阪の御堂筋で、北御堂(浄土真宗本願寺派)と南御堂(真宗大谷派)のお坊さんがケンカしていたら?

日本の警察行け」ですね。

 

Chikirinさんは最新の事例集しか参照していないのではないかと思います。

なぜって?

平成26年(2014年)発表の事例集の一番最初の事例では、迫害主体が政府じゃないんです!

これって、事情はなんだか複雑そうなんですけど、奥さんの氏族とか、違う宗教に興味を持ったら元々の宗教の人に迫害されそうだから難民と認定されたケース。

この事例の判断のポイントにはこんなことが書いてあります。

治安機関が十分機能している状況にあるとはいえず,無法状態が継続している・・・(中略)・・・本国政府や申請者が属している氏族による十分な保護は期待できず、

 難民認定されているんです!

 

勿論、日本や欧米のように治安が良くてそれなりに人権が守られている国と、無政府状態修羅の国との間には、ものすごーく広い幅があります。

そのどこからが難民で、どこからが難民じゃないかってのはすごく難しいです。

ただ、迫害主体が本国政府ではなく、過激派の場合は難民とは認められない、というのは全く間違いですね

 

2.話が信憑性に欠ける

これが問題視されて、正直困惑しています。

難民認定を行う上で最も重要な証拠は何でしょうか?客観的な書類とかでしょうか?違います。

申請した難民の方自身と、その口から語られる(あるいは書かれるなどする)言葉です。

ここがぐずぐずなら当然ですが、認定されるわけがありません。

 

どういったケースでこのような判断がなされているのでしょう。

例えば、改宗したので死刑になるおそれがあるとして申請したケース

自身の宗派はわからない旨述べていた

 え?マジで?

 

申請者の供述について・・・(中略)・・・看過しがたい変遷や齟齬が認められる

とされ、不認定となっているケースが事例集には多数あり、Chikirinさんはそれについて

これを見て思ったのは、「筋道立てて説得力のある話し方ができないと認定されないんだな」ってこと。

命からがら逃げてきた外国で、すべての証拠を揃えて日本語に訳し、その資料と齟齬のないようきちんと論理立てて話す。

そういうことができないとダメなんです。


最初は「これを言ったらやばいんじゃないか」みたいなことがあって言い出せず、途中で「やっぱ言うべきだ!」と思って言い出したりしたら、「話に看過しがたい変遷が認められる」とか言われちゃうわけです。

そこから「自分のアタマで考えよう」というご自身の著作へのリンクを張るのもな~と、とりあえずくさしておきます。

 

これ、看過できない場合があるってことは、看過できる場合もあるってことです。

平成25年(2013年)の事例集の事例2では

難民認定申請においては,申請者の供述及び提出資料に不自然・不合理な点が認められ,その申立てを直ちに信用できない

として、一度不認定となっていますが、その後の異議申立手続では、資料を追加提出したことで結果として難民認定されています。追加OKなんですね。

 

また、裁判所の判例を持ち出すのはいささか大人げありませんが、その中では

原告の供述内容には,一部変遷している点もあるが(後記イ参照),当初さして重要な事実ではないと捉えて詳細を語っていなかった部分が後になって語られたものと考えて不自然でない箇所にとどまっていて,原告供述の全体としての信用性を揺るがすような重大な変遷を含んでいるとは認められない。これらのことからすると,原告の供述は,全体として基本的に信用するに足りるものというべきである

 はい、言われるとは限らないじゃん。なんです。

 

そもそも「ちゃんと説明しろよ」ってのは世界的に見て当たり前なんです。

当然、子供とか精神的な病気を患っている人には配慮が必要です。

政府の人間に迫害されたりした人が、外国でいきなりペラペラ喋れるわけもないです。

それでもなお、「ちゃんと説明しろ」ってのは、配慮は必要とされつつも、申請者に要求されているのです。

 

UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)発行の「難民認定基準ハンドブック-難民の地位の認定の基準及び手続きに関する手引き-」(通常、単にハンドブックと呼ばれています)では

205. したがって事実を確認し評価する手続は次のように要約される。

(a)申請者は、

(i) その事案の事実を確定するに当たり、真実を述べ、かつ、審査官に十分に協力しなければならない。

(ii) 利用可能な証拠により自らの供述を裏付けるとともに証拠が欠如していることについて納得し得る説明をするよう努めなければならない。必要なときは追加の証拠を入手するよう努力しなければな らない。

(iii) 審査官が関連する事実を確定することができるのに必要な程度に詳細に自らと過去の経験に関する情報を提供しなければならない。難民の地位の申請について主張されているすべての理由につい て一貫した説明をするように求められ、また、すべての質問に答えなければならない。

とされています。

もう一度言います。これが世界標準です。

少しだけネタばらししておきますと、日本が最も違うのは205(b)(ii)なんですけどね・・・

 

 さて

申請者の言うことが「客観的な情報と異なる」って書いてある事例もすごく多いんだけど、アフリカや中東の紛争に関する「客観的情報」って、いったいどこから得ているの? 

まーさか NHK のニュースとかからじゃないでしょうね?

 法務省入国管理局は、ご丁寧に仮訳までして、米国国務省報告と英国内務省報告をサイトに掲載しています。

まーさか、入管のサイトぐらい見ていないわけじゃないでしょうね?

これはあくまで、仮訳して掲載しているものですから、ほかの国の翻訳されていない資料とか、国連が発表している資料だって見ているでしょう。例えば、これ

 

また、かなり細かい話になりますが、難民調査官は照会権限がありますので、「ねぇねぇ外務省ちゃんこんなこと知らない?」とかもできるわけです。

独自で情報収集して難民認定する専門部局作れよ!と思いますが、それは別のお話しです。

 

報道資料だって重要です。先ほど挙げた判例でもかなり報道に触れられています。

報道から体系的に情報収集・分析って日本人にとっては相当難しい。入管も人材の量・質の両面でできていないはずですし、それができている組織自体ほぼ無いのではないでしょうか。でもまぁ多少はやっている。

 

NHKニュースだけなわけないでしょう?ということです。

 

てか、そもそも判定を担当してる人たち、途上国や紛争国に行ったことくらいはあるんですかね? 

過激派や政府軍や反政府軍がぐちゃぐちゃに入り交じってめちゃくちゃな国がどういう状況か、ちゃんと理解してます?

申請者の話に信憑性が感じられるかどーかって、審査官がどれくらい「内戦に陥ってる国の状況」をリアルに想像できてるかにも大きく左右されてそうだなーと思いました。

海外の審査官は、途上国や紛争国詣をして、状況をみんなリアルに理解してるんですか?普通は自国にやってきた人を、自国のオフィスで審査します。第三国定住の場合は、避難先国の難民キャンプへ赴くこともあるでしょう。

 

あと、審査官って誰の事ですか?

日本の場合ですと

  •  難民の認定は、法務大臣の権限です。法務大臣ですか?
  • 入国審査官のうち、法務大臣が指定した難民調査官ですか?
  • 難民と認定しない処分を受けた場合、審査請求を行うことができます。その際、法務大臣に難民の認定に関する意見を提出する難民審査参与員ですか?
  • 難民認定行政処分ですので、その結果に不満がある場合は当然行政訴訟を提起することができます。裁判官ですか?
  • UNHCRは、保護を必要とする難民を難民と認定することがあります(マンデート難民といいます)。UNHCRの保護官ですか?

めっちゃいっぱいの人が、難民認定に関わっているんです。想像力でどの程度左右されるのかを、想像してみましょう。

では、次へ行きましょう。

 

3.内戦から逃げてきても難民とは認められない

「国が内戦でぐちゃぐちゃになってるから逃げ出してきた!」では難民とは認められないんです。

本人がなんらか政治的な主張をし、それを理由として本国政府から迫害されないとダメなの。

内戦の場合、自分はなんの政治的な主張をしてなくても、爆弾が落ちてきたり銃撃戦に巻き込まれたりするでしょ。だから、内戦から逃げてきても難民とは認められないんです。

 政治的意見が理由じゃなくても、難民と認定されてるよ!っていうのは事例集にあります。先述の通りです。

 

難民というのはとても幅広い概念です。帰宅難民とか、ネカフェ難民なんてのもありましたね。その中で国際的に庇護されるのは一部の人だけです。

事例集では「条約難民とは認められなかった」なんて文句が連発されています。

どうやらChikirinさんの見立てでは、条約難民という日本独自の基準があるようです。

 

 

その条約・・・加盟国日本だけなん・・・?ほかの国・・・みんな脱退してしもたん?

 

4.メンバーとして反政府活動の会合やデモに参加した程度では難民として認められない

リーダなどの主要メンバーじゃなければ難民認定されないし、アウンサンスーチー氏のように目立つリーダーはそもそも殺されないんだから、範囲狭すぎない?

ということみたいです。

 

・・・ 10万人が参加した反政府デモがあったとして、この基準で難民として認められるリーダーって何人くらいなんでしょう?

 

 海外でたまに集団での暴動とか略奪あっても、逮捕される人というのはそんなに多くありません。

10万人規模で暴動が起こっていろーんな店やら壊されたり、車燃えてもです。

多分ですが、すごい単純な理由です。数多すぎて誰が誰か分からん

 

リーダーや主要メンバー以外でも、難民認定されている方はいます。

家族が有名な反政府メンバーだったとか

職業の世界では有名人とか

反政府団体に寄附をしたり,協力的な行動をとってたら軍に取り調べを受けた軍の職員とか

連日デモに参加してたら、逮捕されて拷問されて指紋まで取られたとか

 ですから、

そういう人が逃げてきても「リーダーじゃないから保護する必要はない」ってこと?

 ということではないです。

 

と、ここまで見てきましたが、何でChikirinさんはこんなにおかしなことをいっぱい書いちゃったのでしょうか。

最新の事例集しか見ずにえいやっで書いちゃったから?

実はもっと大きなつまづきがあったのです。

それは難民条約ってなーにってところと、難民条約を明らかに誤読しているからです。

 

ということで次回に続きます。